航空事業:航空券システム新規開発プロジェクト。ベンダー撤退と開発遅延を乗り越えたPMO支援事例
はじめに
航空業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、単なる利便性の向上に留まらず、顧客体験(CX)の大きな変革を意味しています。そんな中、国内航空大手企業様では、顧客ユーザーが利用する航空券の購入・発券システムを最新のSPA(Single Page Application)へと刷新する大規模な新規開発プロジェクトが進められていました。
しかし、複数のベンダーが複雑に絡み合う大規模開発特有の難しさに直面し、プロジェクト遅延につながっていました。特に、各システムベンダーとの要件確認や交渉を担う担当者が不在であり、開発の遅延や初期要件の不備が深刻な課題となっていました。本記事では、弊社が2023年11月から1年以上にわたり参画し、いかにしてこのプロジェクトに対応してきたか詳細をご紹介します。
プロジェクト背景とクライアントが抱えていた課題
本プロジェクトでは、顧客が直接利用するフロントエンドシステムのSPA化を推進していました。しかし、参画当時は以下のような、複数の課題が存在していました。
1. 実務レベルでの推進担当の不足
本企業様と複数のシステム開発ベンダーとの間で、実務レベルの要件確認やネゴシエーションを行う役割が不在となっていました。その結果、各ベンダーから上がってくる課題に対応しきれず、プロジェクト管理に影響が出ていました。
2. 開発遅延とベンダーの急な撤退
初期要件の不備や、各種設計書のレビューへの対応工数が足りていなかったため、開発遅延につながっていました。さらに、開発当初から参画していた主要ベンダーの一つがプロジェクト途中で急遽撤退するという不測の事態が発生し、作業の引継ぎが急務になっていました。
3. テストフェーズへの不透明感
システムテストを実施するにあたっての有識者が不在であり、テスト環境の整備や計画策定も遅れていました。このままでは、リリース予定日に間に合わないリスクが発生していました。
アプローチとプロジェクト推進のポイント
弊社は、画面開発領域のPMOとして参画し、現場での各社ベンダーコントロールを丁寧に行い開発推進をすることで、プロジェクトでのボトルネックを一つずつ解消していきました。
徹底した進捗・課題管理の導入
JiraやBacklogを最大限に活用し、これまで曖昧だったチケットの起票ルールや優先度を策定しました。週次の課題定例会を主催し、進捗状況を定量化することで、プロジェクトの状態を「見える化」しました。これにより、関係者が「今何をすべきか」を即座に判断できる環境を構築しました。
ベンダー交代の引継ぎ支援と開発再開
撤退したベンダーからの状況ヒアリングを迅速に行い、新たに参画したベンダーへの開発引継ぎ業務を主導しました。会議のファシリテーションやチケットを通じた詳細な情報共有により、短期間で開発を再開可能な状態まで復元させました。
実務に踏み込んだテスト・設計支援
単なるPMO管理業務に留まらず、不足していた各種設計書のレビューや、シナリオテストの作成、テスト計画書の策定といった実務も並行して実施しました。特に、GDS(AMADEUS等の電子予約ネットワーク)との外部連携を含む高度な機能要件の実現可能性検証など、技術的なバックグラウンドを活かした支援を行いました。
システム構成とプロジェクトの全体像
本プロジェクトは、AWS上に構築された堅牢なインフラ環境をベースに、複雑な外部システムとの連携を実現するものでした。
システム関連図
フロントエンド(SPA)からのリクエストに対し、AWS EC2上が応答。データ基盤にはOracle(RDS)やMongoDB(RDS)を活用し、さらには航空業界のグローバル基準である「AMADEUS Altea Web Service」といったGDSとの外部連携も行う構成です。弊社はこの広範なシステム領域において、画面領域側からプロジェクト全体を支える役割を担いました。

13ヵ月の開発ロードマップ
2023年11月から2024年12月までの期間、以下のようなステップで推進しました。
- 2023年末:外部設計書のレビューとベンダー移行対応の開始。
- 2024年前半: チケット優先度の選定、新ベンダーのルール策定、システムテストに向けた事前整理を実施。
- 2024年中盤: 結合テスト環境の構築、およびシステムベンダー納品物の精査。
- 2024年後半: 試験障害の優先度策定と対応レビューを繰り返し、稼働後のエンハンス対応まで伴走。
最終的な成果
弊社の参画後、プロジェクトでは以下の成果を上げることができました。
1. 1人月分の遅延解消と200件超のレビュー完遂
チケット起票ルールと優先度の策定により、プロジェクトの管理体制を正常化させ、実質1人月分の遅延を解消しました。また、止まっていた約200件の設計書レビューを、本企業様側の情シス担当者と協力してわずか1ヶ月で解消し、開発スピードを正常に戻しました。
2. ベンダー撤退の影響を最小化
急なベンダー交代という大きなリスクに対し、迅速なキャッチアップとエスカレーションを行うことで、開発の停滞を最小限に抑え、テスト開始に間に合わせることができました。
3. テスト有識者不在からの立て直し
システムテスト有識者不在という状況下で、現行のテストチームと密に連携して環境構築を推進。テスト開始可能状態まで持っていくことで、スケジュールの遵守につなげました。
おわりに
大規模なシステム開発、特にベンダーが複数存在するプロジェクトでは、全体像がつかみづらくなり、遅延や課題が放置されてしまい、そのリカバリーには大きなエネルギーが必要となります。また、開発途中のベンダー交代は、通常であればプロジェクトの再検討もされる、大きなリスクです。
今回の事例は、実務能力と管理能力を兼ね備えたPMOが介在することで、このような状況下でもプロジェクトを再建し、価値を創出できることを示しています。
弊社では、航空・公共インフラをはじめとする大規模システム開発のPMO支援・ITコンサルティングを行っております。開発の停滞やベンダーコントロールにお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。弊社は、これからもお客様の挑戦に伴走し、難易度の高いDXプロジェクトを成功へと導くパートナーであり続けます。
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