製造業:5億行のデータを活用する基盤開発とBI導入事例

目次

はじめに

現代の製造業において、膨大な業務データや人事データをいかに迅速に意思決定に繋げるかは、企業競争力を左右する極めて重要な課題です。しかし、大規模なプロジェクトになればなるほど、システム開発そのものだけでなく、進捗管理やベンダーコントロール、そして現場への定着といった「推進力」の不足が大きな課題となります。

今回は、弊社が2022年から2023年にかけて支援した、製造業大手の企業様における「データ基盤開発およびデータ可視化環境の実現・運用」のプロジェクト事例をご紹介します。PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)としての参画から、いかにして5億行ものデータ活用を成功に導いたのか、詳しく解説します。

プロジェクト背景とクライアントが抱えていた課題

本企業様では、全社的に利用可能な業務データおよび人事データの蓄積・可視化を目指し、AWSを活用したデータ基盤の開発プロジェクトを立ち上げていました。しかし、参画前の状況は、システム開発の実装担当者は存在するものの、プロジェクトを円滑に進めるための「管理・推進」の役割が不在という状態にありました。

具体的には、以下のような課題に直面していました。

  • 推進担当の不足:
    アジャイル開発の特性を理解し、プロジェクトを回せる担当者が不足。
  • 管理体制の不在:
    社内システム開発プロジェクトとその開発者は存在するが、進捗・課題管理担当が不在。
  • 移行計画の不透明さ:
    既存のデータ蓄積環境から新環境へ移行する際、周辺システムへの影響を考慮した計画を立案できる人材不足。
  • ベンダーコミュニケーションの停滞:
    大手SIer(ベンダー)との窓口が曖昧で、意思疎通に齟齬が生じやすい。
  • データ可視化の実現・運用担当の不在:
    BIツール(Tableau)の導入・運用サポート可能な担当の不足。

これらの課題を解決し、実用的なデータ基盤をリリースするために、弊社がPMO兼開発サポートとして参画することとなりました。

アプローチとプロジェクト推進のポイント

2022年7月から2023年8月までの約1年間、弊社は情報システム部の一員として、以下の3つの軸でプロジェクトを牽引しました。

① アジャイル型開発によるプロジェクト管理の徹底

まず着手したのは、不透明だった管理体制の立て直しです。Backlogを導入してタスクと課題を一元管理し、開発~改善のサイクルを短期間で繰り返す「アジャイル型」の推進を実施しました。また、課題全体について、ファイル・内容を整理した上での一元管理の実現しました。

② ステークホルダー間の「ハブ」としての機能

ベンダー側との窓口となり、技術的な仕様の調整から課題の解消まで、中心的な役割を担いました。それにより、ステークホルダー間で齟齬の無い意思疎通を実現し、プロジェクト運営を支援しました。 システム移行においては、既存環境の制約や周辺システムへの影響を精査し、詳細な移行手順書を作成。リスクを最小限に抑えたリリース計画を立案・実行しました。

③ 現場に「使われる」BI環境の構築サポート

ツールの導入だけで終わらせないために、ユーザー部門(業務各部門・人事部)への徹底したヒアリングを行いました。要件を整理した上で、Tableauを用いたデータの可視化を具体的にサポート。 さらに、利用手順書やユーザー管理ルール(IDの発行・削除手順等)を作成し、プロジェクト終了後も現場で自走できる運用体制を構築しました。

システム構成とプロジェクトの全体像

本プロジェクトでは、AWS Cloud上にNode-RED(ETLツール)、PostgreSQL(DB)、S3などを組み合わせたデータ基盤を構築しました。

この基盤により、業務データ5億行、人事データ5年分という膨大な情報をセキュアかつ効率的に扱えるようになっています。

スケジュール面では、2022年後半から2023年前半にかけてデータ基盤の開発・保守を並行して行い、並行してBIツールの導入とフェーズ分けされたデータ可視化対応を完遂しました。

最終成果

約13ヶ月の支援の結果、本プロジェクトは以下の大きな成果を上げることができました。

  • 遅滞なきリリースと安定稼働:
    機能ごとに検収とリリースを繰り返す手法により、大規模な移行を遅延なく達成。リリース以降、基盤における重大な障害は発生していません。
  • 5億行データの活用実現:
    膨大な業務実績データを蓄積。さらに、特定の条件に基づいたアラート通知機能を実装し、業務担当者が即座に異常を察知できる仕組みを実現しました。
  • 組織的な意思決定のスピードアップ:
    過去5年分の人事データ(有給取得状況等)をTableauで可視化し、社内約120名の役職者向けに公開。これにより、組織の状態を定量的に把握し、迅速なマネジメント判断が可能となりました。
  • 自走可能な運用体制の確立:
    各種手順書の整備により、人事部管理者自らがユーザー管理をスムーズに行える状態を作り上げました。

おわりに

今回の事例では、単に「システムを作る」だけでなく、複雑な利害関係を調整し、現場のニーズを汲み取りながらプロジェクトを動かす「推進力」が成功の要因となりました。

弊社では、このような大規模・複雑なデータ基盤構築プロジェクトにおいて、お客様に伴走するPMOとして、あるいは技術的な課題を解決するパートナーとして、ビジネス価値の最大化を支援しています。 データ活用を始めたいが、推進体制に不安がある、あるいはベンダーとの調整がうまくいかないといったお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

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