製造小売業:20以上の関連システムを繋ぐグローバル統合に伴う人事システム刷新

目次

はじめに

ビジネスのグローバル化が加速する中、バックオフィス機能の統合は避けて通れない課題です。特に「ヒト」の情報を管理する人事システム(HCM)の刷新は、単なるツールの入れ替えに留まらず、各国の制度や既存の膨大な周辺システムとの整合性が問われる難易度の高いプロジェクトとなります。

本記事では、弊社が製造小売業者様において実施した、グローバル規模でのSAP導入プロジェクトにおけるPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)支援の事例をご紹介します。日本国内だけでも20を超える関連システムが存在し、かつ複数のプロジェクトが並走する複雑な環境下で、いかにして滞りなくリリースを実現したのか、そのプロセスと成果を詳しく解説します。

プロジェクト背景とクライアントが抱えていた課題

本企業様では、本社機能の海外移転に伴い、業務プロセスや人事制度をグローバルで統一・統合する方針が打ち出されました。その一環として、日本を含む全拠点でのSAP導入が決定されましたが、プロジェクトの本格始動にあたっていくつかの課題に直面していました。

  1. システム的知見と調整能力を兼ね備えた人材の不在
    グローバル共通の要件と日本固有の業務要件の間に立ち、システム的な知見を持ちながら複数の調整軸をハンドリングできる人員が不足していました。特にグローバルチームと日本の現場、そして複数のベンダーを繋ぐ役割が不在でした。
  2. 具体性に欠けるタスク管理
    大規模プロジェクトゆえに、計画をアクティビティ(具体的な作業単位)のタスクにまで落とし込めておらず、実行フェーズでの「誰が・いつまでに・何をすべきか」が不明確な状態でした。
  3. 関連システムへの影響把握と改修計画の遅れ
    人事システムの刷新は、給与、勤怠、福利厚生など20以上の周辺システムに影響を及ぼします。しかし、これら関連システムの改修計画が具体化されておらず、全体スケジュールの遅延リスクとなっていました。

アプローチとプロジェクト推進のポイント

「横串」の連携を支える会議体とファシリテーション

各サブプロジェクト(人事制度、業務プロセス、システム開発)や、並走する他のプロジェクト間での情報の齟齬を防ぐため、週次での「横串会議」を設置しました。単なる会議事務局ではなく、システム的な論点を整理した上でファシリテーションを行い、意思決定のスピードを向上させました。

WBS・DevOps・ALMを活用した進捗・課題管理

WBS(作業分解図)に加え、DevOpsやALM(アプリケーション・ライフサイクル・マネジメント)のフレームワークを活用しました。これにより、進捗状況をリアルタイムで可視化し、発生した課題を即座に担当者へ割り当てて解決までサポートする体制を構築しました。これにより、開発、テストにおいて時間、クライテリア、連絡ポイント管理を的確に実施し、滞りなく作業を完了しました。

リリースに向けた「タイムチャート」と「クライテリア」の策定

テストや本番移行(リハーサルを含む)における、詳細なタイムチャートを策定しました。また、各フェーズを完了して次に進むための「エグジット・クライテリア(完了判定基準)」と、開始するための「エントリー・クライテリア(開始判定基準)」、さらに緊急時の連絡ポイントを定義。これにより、属人的な判断によらないテスト~リハーサル、そして本番リリースを実現しました。

システム構成とプロジェクトの全体像

本プロジェクトのシステム構成は、グローバル共通基盤としての「SAP S/4」および「SAP HCM」を中心に据えた、大規模かつ複雑なものでした。

日本国内においては、新しいSAP HCMを核としつつ、以下の20以上の関連システムとの整合性を確保する必要がありました。

  • 会計システム・勤怠管理システム(基幹業務との連携)
  • 営業支援システム・認証基盤(ID管理や権限の同期)
  • 通勤手当・研修基盤・労組システム(日本独自の制度対応)
  • 本社ビルシステム(入退館管理等)

これに加え、他の並走プロジェクトとのデータ連携も必要であり、弊社はこれらのステークホルダーとの間に立ち、ヒアリングの実施から、必要な改修内容の定義、接続テストの調整までワンストップで支援しました。

最終成果

約1年半にわたる支援の結果、2024年1月の本番リリースを滞りなく完了させることができました。主な成果は以下の通りです。

  • 関連システム20以上の改修・テストを完遂
    各システム主管へのヒアリングを通じて、影響範囲を漏れなく特定。改修からテスト、リハーサルまでのスケジュールを可視化したことで、大きな手戻りなく全システムの接続を完了させました。
  • 予期せぬインシデントの未然防止
    並走プロジェクトやサブプロジェクト間の調整を円滑に行ったことで、要件の競合やデータの不整合によるトラブルを事前に回避しました。
  • 意思決定の質の向上
    複雑な状況を整理した上での役員向け報告/承認用資料の作成により、経営層が迅速かつ正確な判断を下せる環境を整備しました。

おわりに

グローバル統合という大きなプロジェクトでも、実態は一つひとつのタスクと調整の積み重ねです。弊社は、システム的な専門知見と高度なPMOスキルを掛け合わせることで、お客様のプロジェクトを成功へと導きます。

人事領域に限らず、複雑なシステム刷新やグローバル展開でお困りの際は、ぜひ弊社へご相談ください。課題の整理から、実行フェーズでの推進まで、貴社のチームの一員として並走いたします。

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