展示会事業:DXを加速させる「標準化×共通基盤」戦略

目次

はじめに

近年、展示会・イベント業界ではデジタル化の波が急速に押し寄せています。単なる「場所」の提供から、出展社と来場者をデータでつなぎ、新たなビジネスチャンスを創出する「マッチングプラットフォーム」への変革が求められています。しかし、多くの主催企業において、長年の運用で積み重なった「システムの複雑化」という課題に突き当たっています。

本記事では、大規模展示会を多数抱える企業様において、弊社が実施した「業務システム再構築に向けた戦略策定」の事例をご紹介します。企業様が抱える課題を明確化し、中長期的な成長を支えるIT戦略を1ヶ月という短期間で実行したのか、詳しく解説します。

背景とクライアントが抱えていた課題

本企業様は国内有数の展示会主催者ですが、そのシステム環境は「個別最適」となっており、構造的な課題を抱えていました。

この課題の背景として、社内の複数部門が、開催する展示会ごとに個別に外部ベンダーへシステム開発を発注してきたことにあります。その結果、各展示会で似たような機能を持つシステムが「スクラッチ開発」で次々と作られ、以下のような3つの大きな課題が顕在化していました。

  • システムの再利用性が著しく低い
    ある展示会で開発した優れた機能が、他の展示会では使えないという問題が繰り返されていました。
  • 累積的なコストの増大
    システムが乱立することで、開発費だけでなく、日々の保守運用コストが膨れ上がり、IT予算を圧迫していました。
  • データの断絶(データサイロ)
    来場者や出展社のデータが展示会ごとに分断されていたため、全社横断でのデータ分析や、効率的な営業・マーケティング活動が困難な状況に陥っていました。

このままでは、データ分析を武器にした競合に遅れをとってしまう、という危機感のもと、展示会業界特有の業務要件と、SaaS適用の可能性を両立させた「新しいシステム戦略」の策定が急務となっていました。

アプローチとプロジェクト推進のポイント

弊社はこの課題に対し、単なる現行踏襲の刷新ではなく、「標準化」と「共通基盤化」を軸にした戦略的アプローチをとりました。

現状分析による「問題構造」の可視化

まず取り組んだのは、現行のシステムと業務プロセスの徹底的な「棚卸し」です。どの工程で重複が発生し、何が再利用を妨げているのか。データの流れを可視化することで、システム乱立の根本原因が「個別最適」の積み上げにあることを可視化しました。

展示会横断での「共通要件」の抽出

展示会横断の観点で業務要件・データ要件を整理し、あらゆる展示会に共通する「標準的な業務プロセス」と「データ要件」を抽出しました。これにより、どこまでを共通化し、どこからを個別対応とするかを明確にしました。

3つのシナリオによる多角的なソリューション評価

次に、以下の3案について、技術・運用・コストの観点から詳細なFit&Gap分析を行いました。

  • 既存システムの改修案
  • イベント系SaaSおよびCRM/MA/DWHの導入案
  • 新規スクラッチ開発案

特にSaaSについては、イベント系SaaSおよびCRM / MA / DWH等のSaaSを調査し、導入可否を技術・運用・コスト面から評価しました。

システム構成とプロジェクトの全体像

今回の戦略策定は、2025年11月の1ヶ月間という非常にタイトなスケジュールで実施しました。

プロジェクトの全体像(1ヶ月の集中プロセス)

  • 第1週: 候補となるSaaSサービスの調査とFit&Gap分析。
  • 第2週: SaaS利用を想定した具体的な機能定義と業務フローの策定。
  • 第3週: 展示会担当者との充足度チェック。現場に必要な機能を精査。
  • 第4週: 中長期的な目線でのシステム戦略提言と意思決定支援。

目指すべきシステム構成

再構築のターゲットは、業務部門(主催者)、出展企業、来場者の三者が利用する「展示会基盤システム」です。 フロントエンドではユーザー体験を損なわず、バックエンドではデータが共通のDWH(データウェアハウス)に集約される構成を想定しています。これにより、来場者がどの展示会に興味を持ち、出展社がどのイベントでどのような成果を上げたかを横断的に把握できる基盤を構築します。

最終成果

1. 投資判断のための「客観的な材料」の提供と意思決定の加速

SaaS / 既存改修/新規開発の3案比較により、最適な投資判断の材料を提示、支援。どこに投資すべきかという問いに対し、判断を可能とするための具体的な意思決定材料を提供しました。それにより、本企業様内での意思決定の加速につながりました。

2. 「標準化×共通基盤」という明確な指針

短期的なコスト削減だけでなく、将来的にデータを活用して収益を最大化するためのロードマップを策定しました。これにより、将来にわたる長期的な効率化・データ活用を見据えたシステム戦略を立てることができました。

3. 問題の本質の明確化と現場での理解

「個別最適」のシステムが乱立していた構造的理由を明確化したことで、社内の各部門が問題を把握し、「なぜ、共通化が必要なのか」を開発現場レベルで理解を促しました。

おわりに

個別最適されたシステムの乱立は、ビジネスの成長過程で多くの企業が直面していきます。しかし、それを放置することは、将来の成長機会を損失してしまうことにつながりかねません。

今回の事例では、課題と根本原因を明確化し、中長期的な視点を持った「標準化」戦略となり、結果として経営の意思決定の加速をさせていきます。弊社は、これからもお客様のビジネス/ITパートナーとして、戦略の策定から実行までを強力にサポートしてまいりますので、そのようなお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

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